MAESTRO-K! S1:赤いビルヂングと白い幽霊

MAESTRO-K! S1:赤いビルヂングと白い幽霊

last updateآخر تحديث : 2025-10-29
بواسطة:  琉斗六مستمر
لغة: Japanese
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BLベースの日常物コメディ。 海外ドラマのシットコム風味を目指して、恋愛感情が入り乱れたグダグダなストーリーが展開しています。 価値観が、昭和と平成とイマドキが入り混じった現代物。 えげつない会話で笑いを狙っていますが、BLなのにロマンチックな展開は皆無。

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الفصل الأول

1.朝の恒例行事

 朝八時、枕元に置いたスマホのアラームが鳴る。

 俺は身支度を整えると、部屋を出て、上階のペントハウスへと向かう。

 俺こと多聞たもん蓮太郎れんたろうと、シノさんこと東雲しののめ柊一しゅういちの馴れ初めを話始めたら、それこそ夕方になってしまうので、ここでは割愛する。

 現状、俺はシノさんの持ちビル "キングオブロックンロール神楽坂ビル" 内の賃貸「メゾン・マエストロ」で暮らしていて、シノさんを起こすのが日課となっているのだ。

 ちなみに、シノさんは俺の幼馴染で、想い人でもある。

「おはよう、シノさん」

 ペントハウスには施錠がされていないので、俺は勝手知ったるナントカで中に入り、寝室で未だ朝寝坊を満喫しているシノさんを起こす。

「なんだよ〜、まだいーじゃんか」

「良くないの。ほら、起きて。敬一クンと、シノさんのコトちゃんと起こすって、俺は約束してるんだから!」

「ん〜、も〜、ケイちゃん余計なコトを…」

 ブツブツ言いながら、シノさんはベッドから抜け出した。

「エービーシーサンドでいいか?」

 キッチンに立ったシノさんが言った。

 シノさんが冷蔵庫から取り出したのは、近所のパン屋で買った八枚切りの食パンとクリームチーズ。

 それと、バナナスタンドに下がっていたバナナだった。

 棚から取り出したホットサンドメーカーに、既にパンが仕込まれている。

「なにそれ?」

「アップル、バナナ、クリームチーズで、エービーシー」

「りんごが……どこに?」

「昨日、メシマズが鎌倉の有名店で買ったとかゆー、ジャムのセットを送ってきてさぁ。ちぃと味見したら、りんごジャムが結構イケたんだよ」

「同じホットサンドなら、ハムとチーズとかいわれ大根……みたいな方がいいんだけど……?」

「あ、かいわれ大根なら、ケイちゃんがそこの窓辺で育ててるぜ」

 シノさんは屋上にプランターの菜園を持っているけど、それに啓発でもされたのかと思ったら、窓辺に置かれているのは豆苗の根っこだった。

「シノさん、これまだ、芽が出てないよ」

「うい? そーだった? んじゃあ冷蔵庫から好きな具材をせい。先に俺のを焼いちゃうから」

 冷蔵庫の中を見ると、スライスチーズとハム、それにシノさん特製のポテサラがあった。

 野菜室にしなびたかいわれ大根もあったので、具材は希望通りのものを作ってもらうことにして、俺はポテサラを器に盛る。

 このポテサラは、シノさんの作り置きおかずの一つなのだが、毎回具材が違う。

 ぶっちゃけ、冷蔵庫の残り物を一掃する時に作られるおかずなのだが、それが毎回なんとなく旨いので、俺の好物のひとつなのだ。

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1.朝の恒例行事
 朝八時、枕元に置いたスマホのアラームが鳴る。 俺は身支度を整えると、部屋を出て、上階のペントハウスへと向かう。 俺こと多聞蓮太郎と、シノさんこと東雲柊一の馴れ初めを話始めたら、それこそ夕方になってしまうので、ここでは割愛する。 現状、俺はシノさんの持ちビル "キングオブロックンロール神楽坂ビル" 内の賃貸「メゾン・マエストロ」で暮らしていて、シノさんを起こすのが日課となっているのだ。 ちなみに、シノさんは俺の幼馴染で、想い人でもある。「おはよう、シノさん」 ペントハウスには施錠がされていないので、俺は勝手知ったるナントカで中に入り、寝室で未だ朝寝坊を満喫しているシノさんを起こす。「なんだよ〜、まだいーじゃんか」「良くないの。ほら、起きて。敬一クンと、シノさんのコトちゃんと起こすって、俺は約束してるんだから!」「ん〜、も〜、ケイちゃん余計なコトを…」 ブツブツ言いながら、シノさんはベッドから抜け出した。「エービーシーサンドでいいか?」 キッチンに立ったシノさんが言った。 シノさんが冷蔵庫から取り出したのは、近所のパン屋で買った八枚切りの食パンとクリームチーズ。 それと、バナナスタンドに下がっていたバナナだった。 棚から取り出したホットサンドメーカーに、既にパンが仕込まれている。「なにそれ?」「アップル、バナナ、クリームチーズで、エービーシー」「りんごが……どこに?」「昨日、メシマズが鎌倉の有名店で買ったとかゆー、ジャムのセットを送ってきてさぁ。ちぃと味見したら、りんごジャムが結構イケたんだよ」「同じホットサンドなら、ハムとチーズとかいわれ大根……みたいな方がいいんだけど……?」「あ、かいわれ大根なら、ケイちゃんがそこの窓辺で育ててるぜ」 シノさんは屋上にプランターの菜園を持っているけど、それに啓発でもされたのかと思ったら、窓辺に置かれているのは豆苗の根っこだった。「シノさん、これまだ、芽が出てないよ」「うい? そーだった? んじゃあ冷蔵庫から好きな具材を出せい。先に俺のを焼いちゃうから」 冷蔵庫の中を見ると、スライスチーズとハム、それにシノさん特製のポテサラがあった。 野菜室にしなびたかいわれ大根もあったので、具材は希望通りのものを作ってもらうこと
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 シノさん作のホットサンドに、インスタントコーヒーで朝食を整える。 かいわれの辛味とハムの塩味とチーズのクリーミーさが最高のホットサンド……なのだが、シノさんの食べているバナナの甘い香りが強烈で、途中からなにを食っているのかわからなくなってきた。「そろそろ、敬一クンの部屋を整えてあげた方がよくない?」「ケイちゃんの部屋なら、ちゃんと用意したぜ」「いや、部屋はあるけど、ベッド無いじゃん!」「なんだよレン。嫉妬かぁ〜?」 俺とシノさんの関係は、言うなれば友人以上恋人未満の状態だ。 と言うのも、シノさんは俺の気持ちを知ってるし、時に身体的接触もしたりしてるけど、いかんせんシノさんは、俺を恋人とは認めてくれていない。 いや〜な感じに、ニヤニヤ笑うシノさんに、俺はささやかなる抗議をした。「敬一クンがシノさんに懸想するような子だったら、ベッドに一緒に寝るって言い出した時点で、同居に反対してますぅ〜!」 会話に出てきた "ケイちゃん" こと中師敬一クンは、シノさんの義弟(仮)だ。 なぜ(仮)なのかと言うと、敬一クンはシノさんの母の再婚相手の連れ子……つまりシノさんと血縁のない赤の他人だからである。 敬一クンは、この春に "赤門" に進学した、大学生だ。 容姿端麗、文武両道のデキスギくんで、日焼けした小麦色の肌が似合う古式ゆかしい二枚目である。 もっとも美男子ってのは往々にして年齢不詳なもので、敬一クンもまた19歳と言われると首を傾げるような、良く言えば大人びた、悪く言えば老けた外見をしている。 このデキすぎているぐらいデキている義弟(仮)は、進学先で父親と衝突し、半ば家を飛び出してきた……形になっている。 親父さんは、ハコイリ息子が住む場所も見つけられずにすぐにも音を上げると考えたようだが、ほとんど交流のない妻の連れ子の元へ転がり込まれて、致し方なく学費は出した……ってことだ。「ケイちゃんさ〜、せっかくエビちゃんがメゾンに住むよーになったんだから、デートのひとつもすりゃいーのにな〜」 エビちゃんとは、このメゾン・マエストロに先日入居した敬一クンの友人で、シノさんが殊更お気に入りになっている海老坂千里のことだ。 シノさんは "エビちゃん" と呼んでいるが、俺は心の中でこそっと "エビセン
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2.メゾン・マエストロ
 赤ビルは、俺達が子供の頃からほとんど手入れをされていない、まるで廃墟みたいな場所だった。 実際、シノさんがサッカーくじの高額当選を果たして購入するまで、ほぼほぼ放置されていた建物だ。 神楽坂という場所は、そもそも街全部が路地路地しい路地で出来ているこちゃこちゃした場所だ。 よほどの老舗や、SNSを上手く使った宣伝でもしない限り、表通りで開店出来なければ継続するのが難しい。 飲食店なら、尚更だ。 だがこのビルには、一階に作り付けの煉瓦窯がある。 とゆーか、煉瓦窯を作りたいばかりにビル全部が赤レンガで出来ていて、 "赤ビル" の由来はそっからきてる。 元のオーナーがパンが大好きで、趣味のパン作りが高じてパン屋を始めたからだ。 しかしオーナーが亡くなり、パンを焼くヒトがいなくなったら、作り付けの窯と客商売に向かない地の利の悪さが最悪の相乗効果を生み、買い手が全くつかずに廃墟と化していたのである。「シノさん、今日の即売会どうするの?」 即売会とは、アナログレコードの即売会のことだ。 毎月同じ日に開催されており、個人客も出入り可能だが、基本的には同業者が集まって仕入れをする催しで、場合によっては掘り出し物に遭遇するが、まぁ、そんな奇跡は滅多に無い。「ん〜、今日は行く〜」 不思議なくらいシノさんは、こういう時に鼻が利くというか、勘が働く。 シノさんが行くと言うとそこそこの物が手に入り、乗り気で出向けば意外な掘り出し物を見つけてくるが、気が向かない時はむしろトラブルに見舞われたりするのだ。 今日の返事の具合だと、そこそこ良さげな商品が手に入りそうなんだろう。 売り手にとって最大のウィークポイントたる煉瓦窯は、シノさんにとって最大の魅力だった。 レトロモダンとは名ばかりのオンボロビルを、シノさんはサッカーくじの当選金でまるっと買い上げ、リフォームをした。 一階は、シノさんの趣味のアナログレコードの店 "MAESTRO神楽坂"。 併設のカフェは、件の煉瓦窯で焼き上げたキッシュを楽しめる "マエストロ神楽坂"。 つまるところ、即売会はシノさんの本業の "仕入れ" なんである。
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 そこそこ乗り気だったシノさんは、いざ出掛ける段になったら、愛車のスーパーカブを敬一クンに貸してしまっていることを思い出し、やや面倒くさそうにぶちくさ言いながら、ようやく出かけていった。 シノさんを見送ったところで、俺は店の鍵を開けて表の掃除を始めた。 現状、俺は "MAESTRO神楽坂" の雇われ店長という立場にある。 子供の頃から、近所で "おばけビル" として名を馳せていた赤ビルで、店長として雇われるなんて、想像もしなかった。 とはいえ、俺もシノさん同様にロック好きだし、デジタル化されていない名盤が聴けるこの仕事は、願ってもない。 シノさんの営業方針では開店休業どころか、先細って潰れるのが目に見えていたこの店は、敬一クンの登場によって低空飛行だが、なんとか仕事として成り立っている。 というのも、赤ビルは二階がテナント三階と四階は "メゾン・マエストロ" という賃貸物件だったのだが、シノさん一人だった時には、ほぼ無人だったのだ。 デキスギクンの敬一クンが、不動産屋との交渉からなにから全部手配してくれたおかげで、賃貸に入居者が現れ、シノさんの経済破綻は免れたのだ。「おはようございます、タモンさん」「おはよう、オグマさん」 掃除をしていると、ビルの脇道からのっそりと、コグマが姿を表す。 この人物は、メゾンの入居者のコグマこと小熊造である。 飯田橋の駅の傍にある、英会話教室の講師をしている。 一見すると、金髪碧眼でムッキムキのプロレスラーみたいな感じで、どっからどう見てもガイジン以外のナニモノでも無いのだが、生まれも育ちも両親も日本製だ。 とはいえ、数代前のジイサンだかバアサンだかにアングロサクソンが混ざっていて、先祖返りでそういう外見になっているんだと、シノさんが教えてくれた。 身長が190cmに届きそうなムッキムキの大男が "小さい熊" なんて字面なもんだから、シノさんが面白がって "コグマ" と呼んでいる。 釣られて俺もコグマと呼んでしまっているが、本人相手にさすがにそれは失礼過ぎるので、うっかり口に出さないようにするのが大変だ。「今朝、柊一サンは?」「即売会いって、居ないよ」「えっ、出掛けちゃったんですか?」「うん」「じゃあ、カフェはお休みですか?」「そうだね、休みだよ」 コグマはなんだか
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3.イケメン王子
 MAESTRO神楽坂は、ネットの取引が主力の店だ。 そしてコグマに告げた通り、シノさんが留守の時はカフェの営業は出来ない。 俺は、アナログレコードの試聴コーナーの手入れをすることにした。 店の売り文句に "ゆっくり試聴をしながら、美味しいお茶と軽食が楽しめます!" ってのを掲げているから、プレーヤーを二台、客が好きに使える形で常備している。 軽食の部分は、キッシュの他に、煉瓦窯で焼いたピザとか惣菜パンがその日の気分次第で提供されるし、お茶は市販のティーバックだけどポットで出すから二杯半ぐらい飲めるのだ。 もっとも、店にシノさんがいれば……だが。 今日のようにシノさんが居ない、もしくは "気が乗らない" 日は、軽食の提供は止まる。 だが俺が店長として店にいる限りは、試聴は可能……と言うスタイルだ。 それ以前に、店の造りがどうみてもアナログレコードの店舗よりカフェスペースの方が広い。 と言うのも、実はカフェの方にはかなり頼りがいのあるパトロンが付いているからだ。 俺はそのパトロンってのを見たことが無い。 ぶっちゃけシノさんから「出資者がいる」と聞かされているだけだ。 ビルのリフォームをした時、シノさんは一階で真面目に店をやる気なんて、1%ぐらいしかなかったと思う。 でもその謎の出資者と知り合ってから、閑散としていたフロアが、あっという間におしゃれカフェに変貌していた。 その手腕にしろ、シノさんに対する肩入れの仕方にしろ、色々微妙な感じがしたので、俺はその謎の出資者を、とりあえず "エセ紫の薔薇のヒト" と呼んでいる。 どんだけ財力があるのか知らないが、その "ぶっといパトロン" のおかげで、カフェはすっかりレトロモダ〜ンってな感じになったが。 同じ空間に共存しているMAESTRO神楽坂の方は見劣りが甚だしくなった。 エセ紫の薔薇のヒトは、アナログレコードにはなんの興味も湧かなかったらしく、こっちには全く出資をしてくれなかったからだ。 ギリギリで、シノさんがどこかから調達したレコードのジャケットをおしゃれに飾って、下側にラックが付いている商品棚があるので、体裁は保たれているが。 イマドキ、アナログレコードプレーヤーは、中古でも結構な高級品だから、メンテナンスは欠かせないのだ。 現状、MAESTRO神楽坂の収支はギリギリでプラマイ
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 シノさんが傍に居るときに作業をすると、集めたイラストにいちいちいちゃもんを付けてくる。 正直に言うと、こういったもののセンスに関しては、俺よりシノさんのほうが才能はあると思う。 ただ、シノさんのセンスはハマる時にはシビれるほどビシッと決まるのだが、本人にやる気がナイ時とか、ダルダルモードの時には、腰が抜けるような結果を生むので、場合によっては頼んだことを後悔することになる。 だからこんな些末な事務仕事は、俺がやったほうがマシな結果が得やすい。 シノさん不在でことがスムーズに進み、意外にも予定より早めに作業が終わったので、俺はついでにごちゃごちゃの配線も整理してしまおうと考え、椅子を退かして机の下に潜り込んだ。「あの、すみません」 不意に声を掛けられて、俺は何も考えずに頭を上げながら、後方に振り返ろうとして、目の前に星が飛ぶ。「ってぇ〜…」 うずくまって配線作業をしているうちに、自分が机の下に潜り込んでいることをうっかり忘れ、後頭部をイヤってほど机にぶつけたのだ。「すみません、急に声掛けちゃって。大丈夫ですか?」 目を開けるとイマドキのイケメン俳優みたいな若い男が、心配そうに俺を覗き込んでいる。「ああ、ええ、ダイジョーブ…。ええっと、今日はカフェは休みですよ」 どう見てもロックのアナログレコード目当ての客…って感じはしなかったので、俺はそう答えた。 MAESTRO神楽坂を営業していても、マエストロ神楽坂を閉めているのは毎度のことで、カフェ目当ての客が来るのも珍しいことではない。「いえ、すみません。俺は客じゃないんです。道を教えてもらえると助かるんですが」 イケメンは立ち上がろうとする俺に手を貸しながら、用件を述べた。 口調は礼儀正しく、爽やかな笑顔が少女マンガの王子様みたいにピタッとハマっていて、まさに白い歯がキラリンと光りそうだ。 イケメン王子は、ポケットからきちんと折りたたまれたメモを取り出すと、俺に差し出してくる。「スマホの地図アプリを見ながら来たんですが、なんだか私道みたいなほうに案内されちゃって…」「この辺は路地が入り組んでますから、地図アプリもあんまりアテにはならないんですよ」 差し出されたメモの住所を見たら、イケメンの持っているスマホの地図を見るまでもなく、俺には場所が判った。「ああ、このマンションなら、この
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4.昼の賄い
 いくら開店休業みたいな店でも、一人で店番している時は、そうそう外出は出来ない。 一応、戸締まりをしてから出掛けるのは "アリ" なのだが、その戸締まりが面倒だから、出掛けたくないってのもある。 俺は家事能力が著しく低く、特に料理はインスタントラーメンぐらいしか作れない。 と言ったら、その状況を考慮して、敬一クンはカフェの厨房にある冷蔵庫に、賄いを用意してくれるようになった。 日によってシノさんが作った物が入ってる場合もあるが、昨晩の残り物のアレンジを、あのねぼすけのシノさんがやれるわけもないので、シノさんの作った物を敬一クンが昼食用に手直ししてくれてるんだろう。 今日はラップに包まれたおにぎりがあったので、俺はそれをテラス席に持ち出して、ペットボトルのお茶を飲みながら、遅い昼食を食べ始めた。 おにぎりがコンビニのおにぎりの二倍…か、それ以上のビッグサイズだ。 なんでこんなにデカいんだろう? と思いながら食べ始めたら、中から半熟の煮タマゴが出てきた。 サイズがビッグだったのは、中にタマゴが一個丸々入っていたからだ。 白身に染みてるだし醤油の味が濃い目で、塩をまぶした白いご飯とのバランスが良く、半熟の黄身がトロッとしててすごく美味しい。 敬一クンはココに来た当初、料理をしたことが無いと言ってたけど、美味しいもの大好きシノさんと暮らし始めたら、すぐにいろんな料理が作れるようになった。 そもそも敬一クンも美味しいもの大好きらしく、シノさんがメシの支度をする時に、自分からコツをどんどん聞いている。 俺も美味しいものは好きだが、じゃあ自分の料理レベルを上げて自炊で食べたいか? と問われると、ちょっと考えてしまう。 経済的にゆとりがあるわけじゃないけど、でも俺はシノさんほど偏食でもないので、自分で失敗を繰り返してレベルを上げる手間を考えると、外食で済ませたほうが美味しいものにありつける可能性が高い。 更に、今はメゾンで暮らしているおかげで、シノさんや敬一クンの料理の恩恵に預かれるし、未だインスタントラーメンしか作れなくても、生活に支障をきたさないのだ。 もっとも、同じゼロスタートでも、敬一クンが料理に失敗したのを見たことが無いので、シノさんの言う「ケイちゃんはなんでも出来る」は、あながちシャレでも揶揄でもなくその通りだと思うし、俺だってあんなスキ
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5.アマミーアマホク
「レン〜、たで〜ま〜」 テラスでおにぎりを食っていると、路地の向こうにグラグラ歩く人影が見え、それがヘロヘロの声で帰宅を告げる。「あ、シノさんおかえり」 俺は席を立って、店の外までシノさんを出迎えた。「うわっ、重っ! 大量だったね」「ねんか予感はしたけど、ここまでとは思わなかったぜ〜。あ〜、腹減った! お? おにぎり? 俺のもある?」 帆布のバッグを床に降ろして、シノさんはテラスの椅子にドッカと座った。「手ェ、洗ってきなよ」「おっ、そっか。おにぎりだもんな!」 シノさんが手洗いをしに行っている間に、俺は大量のレコードを屋内に運び込んでおいた。 夏真っ盛りってわけじゃないが、それでも直射日光の当たるテラスの床に置きっぱなししておいて良いシロモノじゃないからだ。「にしてもシノさん、こんな時間まで、出先で何も食べてこなかったの?」「ん〜、チョと食いっぱぐれた。あの会場の近所って、マトモなメシ食わせてくれる店が全然ナイじゃん!」「いつもの蕎麦屋とかは?」「わざわざ電車降りて寄るのもメンドーでさぁ」「そっか、今日はバイクじゃないもんね」 敬一クンにカブを貸してしまっているから、途中でちょっと寄り道が出来なかったらしい。 俺もカブのことをうっかり忘れていたので、なるほどと頷いた。「おにぎりはあるケド、冷蔵庫から出したまんまだから、スッゲ冷たいよ?」「腹減ってるから、全然オッケー!」 シノさんは座ると、ガッツとおにぎりを掴み、かぶりついた。「味玉おにぎりうめぇ〜〜! やっぱウチのおにぎり、一番うめぇ〜〜!」 って。 めーめーヤギみたいな音を出しながら、冷たいまんまの味玉おにぎりをガツガツ食べている。 おにぎりが美味しいからか、ただハラペコなのか解らないケド、敬一クンがココに来てまだほんの一ヶ月なのに、ウチのおにぎりってなんなの…ってツッコミしたいけど、言うと面倒になるだけだ。「しかしあの会場から、よくもまぁあんな量の荷物持って帰ってきたね。電話くれれば、迎えに行ったのに」「待ち合わせとか、メンドーじゃんか。持ち上がらんってワケでもねかったし、宅配頼むと金掛かるなぁ…って思ったら、もうなんかヤケクソんなった」 そこでシノさんから即売会の様子なんかを聞いていたら、坂の上からイケメン王子が戻ってきた。 爽やか笑顔はどこへやら、な
last updateآخر تحديث : 2025-10-29
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 氷嚢を左目に当てて、俺はカフェの椅子を数脚、横に並べた上に横たわっている。 イケメン王子をグーパンしようとしたシノさんを遮って、うっかり顔面でシノさんの拳を受け止めたからだ。 俺の真隣りにしゃがみこんだシノさんが、顔を覗き込んできた。「ごめんなぁ」「シノさんが暴力沙汰で、またショーゴさんとモメなくて良かったよ」 ショーゴさんは俺達とは小学生時代からの幼馴染なのだが、色々あってシノさんとは犬猿の仲になっている。 だが、元々警察関係とは微妙にソリの合わないシノさんは、やや危険人物としてマークされていて、ショーゴさんは専任担当扱いになっているらしい。 ここでシノさんが傷害沙汰を起こせば、またまたショーゴさんに迷惑が掛かるので、俺はなんとか身内でことを収めようと体を張った。 といえばなんかかっこいいが、止めようとして間が悪く、グーパンを顔面で受け止めてしまったわけだ。「アマホク、何見てんの?」 顔を上げたシノさんは、店内をグルグルと見て歩いていたイケメン王子こと、天宮北斗に声を掛ける。 だがホクトは、それが自分への呼びかけとは全く気付いてないようで、店内の家具や食器を見ては、スマホで写真を撮る作業を続けている。 ホクトは、路地の奥にあるマンションに住んでいる天宮南氏の従兄弟で、ミナミの母親(ホクトの父の姉)に、ミナミの様子を見てきて欲しいと頼まれて、やって来たらしい。「アマホクってばよ!」 シノさんは立ち上がってホクトの肩を叩いた。「えっ? あ、アマホクって、俺のことですか?」「アマミヤミナミがアマミーなら、アマミヤホクトはアマホクじゃろが」「はあ…」「そんで、アマホクはさっきから何をやってんの?」「店の様子を見て、南がどれぐらい出資をしてるのかを見てるんです。そちらが立て込んでいるようなので遠慮させてもらってたんですが、都合がつくようなら、こちらの詳しい経営状態を教えていただけませんか?」「都合もなんも、帳簿管理してるケイちゃんが帰ってこないと、なんもワカランわい」「経理担当の方はいつ頃お帰りになりますか?」「んん〜、レン。ガッコが終わるの何時頃か知っちる?」「今日は夕方じゃないかな」「夕方だってさ」「学校? 学生が経理担当なんですか?」「なんでそんな細かいコト訊いてくんだよ! アマホクはアマミーの様子見に来ただけな
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「あだだだだだ…」 ただカフェの椅子を並べただけの上に仰向けになっていたのが、跳ね起きれば落ちるに決まってる。「なぁにやってんだよ! しっかりしろよ、ほら〜」 手を貸してくれたシノさんとホクトに支えられて、俺は椅子に座り直した。「南の奴、ストーキングなんかしてるんですか?」「してねェよ。俺を口説きに来てるだけだよ」「は?」「だーから。アマミーは俺の焼いたキッシュを食って、この味ならカフェでも出せるし、自分も時々食べたいから、中古レコードなんか売るのやめてココでカフェをやりなって勧めてきたんじゃよ。でも俺は自分がレコードのコレクションするのに、中古ショップやってるほーが都合がイイから、やめるのはヤダつったんさ。そしたらアマミーが、中古屋はネット販売やって、店舗の端っちょに残すだけで充分で、カフェスペースをメインにした方がイイって言ってさ。でもBIGで儲けたあぶく銭はもー残ってナイから無理つったら、アマミーがカフェの資金は全額出資するっつって、店舗の改装全部やってくれたんよ。俺はこんな引っ込んだトコで店やって、儲からなくても知らねェよって、ちゃんと言ったんだけど。でもアマミーは、俺の顔が可愛いから、カワイコチャンにお店を持たせてあげるだけって言ってた」「じゃあシノさん! その、ミナミってヤツと浮気したのっ!」「ンなこたぁしてねェつーの、しつけェなぁ! だいたい俺は最初に金を出すって言われた時は断ったの! アマミーはイケメンだし気前もイイけど、ああいう手合いは油断すっと盗撮とか監禁とか始めるタイプじゃもん、アブねェし! 俺はイケメンもお金も大好きだけど、自分が自由にしてらんないのヤだから!」「ちょ、ちょっと待ってください。えっとオーナーさんは…」「オーナーは俺! 名前は東雲柊一! こっちは社員のヘタレン! 覚えた?」「え、ちょっと!」 ぞんざいな紹介に苦情を挟もうとしたが、ホクトは俺の存在に興味が無かったらしく、スルーされた。「あ、はい、了解です。じゃあ現状を簡単にまとめると、東雲さんのお店に南が勝手に出資している…ってことですか?」「出資つっても、今ンとこ出してもらったのは改装費用だけじゃよ。そんでアマミーには出資者特別待遇で、キッシュの取り置きしてる」「キッシュの取り置き? あの、偏食どころか冷食のグラタンしか食べない南がキッシュを?
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